Bungu Life Thinking

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[ 文房具短編小説 第2話 ] 張りたい想い

サトシは空を見上げていた。
込み上げる想いを押し消すかのように。
何も出来なかったのは自分のせいなんだと思うと、決まって公園に立ち寄ってこうやって空を眺めていた。
雲の隙間から差し込む光をしばらく眺めていると少しでも前を向こうという気になれたからだ。
先に会社に連絡を入れてから、気分を落ち着かせてゆっくりと帰ることにした。


また、ダメでしたか…
そう電話口に出たのは同僚のサトだった。
話し方でだいたいの察しはつくのだが、悲しい報せに、つい『また』と言ってしまうあたりが、正直なところでもあった。

少しゆったりして帰って来て下さいね。
そう告げて電話を切ると、小走りで社外に出て行ってしまった。

サトには気持ちよく仕事をしてもらうための心遣いを忘れていなかった。
それは、メッセージを付箋に書いてサトシのPC画面に貼り付けておくことだった。


また次がありますよ! サト


帰社したサトシが真っ先に目に入ったのはいつもの付箋だった。
ありきたりのメッセージだったが、それだけでまた次に繋げられる。そう思っていたのだが、何で自分にだけ?しかも、不戦で?なんていう疑問を持ち始めていた。

しかし、毎回貼られている付箋を捨てられずに、全てノートに貼り直していたのだ。


ある時手持ちの黄色い付箋がなくなってしまった…
しょうがなく同僚にもらったのがピンク色の付箋だった。
そして、そのピンクの付箋に、

おめでとうございます!
やったね(#^.^#) サト

と、書いてサトシのPCに貼り付けて自席に戻った。


サトシは付箋ノートに貼り付けながら前のを見返してしたのだが、ピンクだったのが余程嬉しかったのか、勘違いしたのかサトに話しかけることにした。


いつもありがとう。
メッセージ。
今回案件受注出来たからさ…


その後が続かない。
サトシはこういうのが極端に苦手だった。
しばらく押し黙ってしまったら、サトから話を振ってくれた。

ご馳走してもらってもいいですよ。

思いがけない言葉にサトシはさらに押し黙ってしまったが、隠しきれない笑顔がそこにはあった。


たまに一人で飲みにきている馴染みのバーにサトを誘うことができた。正確には誘ってもらったのかもしれない。

店に入ると、店内から電話をしてくる女性とぶつかりそうになった。危ないなと思いながらサトを店内にエスコートした。

店のカウンターには天井を見上げた男性がいるだけで、マスターとバイトの子だけしかいなかった。


比革さん、ご無沙汰してます。

あ、サトシさん。
お連れの方ですか?良かったら紹介して下さい。

あ、はい。同僚のサトさんです。

するとサトは軽く会釈をして、彼の横の席に腰掛けた。

シャンディ・ガフを下さい。
それと、浅井さんは何にする?

そうですね。こういうところにあまり来ないので、お任せします。元気で爽やかな声が店内に響いた。

しばらすると比革が目の前に立ち、
ホワイト・レディを彼女の前に差し出した。
ジンベースのスッキリしたカクテルですよ、と言い残し隣の客のカクテルを作り出した。


二人で乾杯をすると、たくさんの話をした。仕事の話、上司の話。普段なにしてるか。たわいもない話に花が咲いた。

しばらくしたところで、アツシが神妙な声で話題を振った。

あ、の、さ。
真剣な話になると声が上ずってしまう。

お礼言ってなかったよね。
いつもありがとう。
聞きたいことがあったんだけどさ。
付箋。なんで付箋なのかなって。
メールとかでも良いのに。


サトはしばらく黙ってしまったが、想いをぶつけることにした。


知ってます?付箋って。
何回でも貼り直せるじゃないですか。やり直しがきくっていうんですかね。
一回で正確に貼れなくても修正がきくんですよ。
失敗を糧に次を頑張って欲しいなってずっと思ってました。
それに、付箋って失敗だったものを何かに使えないかなって研究し直されたんですよ。成功の裏にはたくさんの失敗があったってことなんですよ。なのでこれからも影ながら応援してますね!


ふむふむと聞いていたアツシだったが、どうしても言い返したいことがあった。


俺ってさそんなに毎回失敗してるかな…

あっ。と言って顔を見合わせてしまった。
しだいに堪えきれなくなって、二人で笑ってしまった。


比革さん、サトシは笑ながら話しかけた。
あの、こういうのあります?

あるよ、と比革は答えて店のおくから持ち出してきた。
カバンからいつも使っているペンを取り出すと、何やら書き出した。

サトは覗こうとしたが、サトシは背を向けて見せないようにしてしまった。

そして、それをノートに貼り付けて彼女に渡すことにした。


いままでずっと言えなかったんだけど、これ受け取ってもらえないかな?

そういってユキから受け取っていた付箋を貼り付けたノートに自分の言葉を付け足して、彼女に渡した。

あなたを貼り直さないように、ずっと隣にいて下さい。と。


それを見たサトは答えた。


こういうのは言葉にしないと伝わりませんよ!


そう笑って、彼のノートを受け取った。




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編集後記

こちらの作品は昨年行われましたブングテン4で「大人壁新聞」に掲載されたものです。

ブングテン4 vol.1
ブングテン4 vol.2

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  1. 2012/02/07(火) 16:27:23|
  2. Novel
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